遺言執行者はなぜ必要なのか?

相続は、被相続人の死亡によって開始する

相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継することになります。この時に共同相続人がいる場合は、相続財産は共同相続人の共有となり、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継することになります。

遺言書がある場合

遺言書があれば、遺言書の内容に従って遺産を相続、分配などを行う事になります。 この遺言書の効力はとても強いもので、被相続人が生前に、自分の持ってる遺産をどの様にするべきかをあらかじめ決めていたわけですから、遺産を受け取る側はその意志に従い、遺言書通りの遺産相続を行う必要があります。

遺言書がない場合

遺言書がない場合、共同相続人は、誰がどの遺産をどのように受け取るかを、いつでも遺産分割協議によって決めることができます。しかし、遺産分割協議は、相続人全員が合意しなければ無効です。行方不明の相続人を除外して行ったり、いわゆる隠し子が存在することを知らずにその子を含めずに行った遺産分割協議は無効となります。そのため、協議がまとまらなければ、何年にもわたって被相続人の相続について争うことになってしまうなど、いわゆる「争族」へと発展してしまう場合も少なくありません。

遺産分割協議がまとまらない場合

遺産分割の話し合いがまとまらない場合には、最終的には、家庭裁判所での調停や審判の手続きによることになります。

遺産分割調停というのは、家庭裁判所での遺産分割の話し合いです。調停委員が各相続人の間に入って意見を聞いたり、家事審判官(裁判官)から具体的な解決策が提案されたりしながら、話し合いによって決めます。

調停が不成立となった場合には、審判手続きに移行し、裁判所が分割方法を決定することになります。

なぜ遺言をを作成するのか?

意図を明確にする

遺言書を作成することで、自分の意思や希望を明確にすることができます。これにより、あなたが亡くなった後に財産や資産が希望通りに分配されることになります。遺言書に指定しておけば法定相続人以外の人にも遺産を渡すことができます。遺言書がない場合、財産分割や相続手続きは法律に基づいて行われるため、あなたの意思とは異なる分配が行われる可能性があります。

紛争を防ぐ

遺言書は家族や関係者の間での紛争を未然に防ぐ役割を果たします。特に大切な資産や財産が絡む場合、相続に関する争いや不和が発生する可能性があります。しかし、明確な遺言書があれば、遺産分割に関する意思が明確に示され、争いの余地を減らすことができます。

負担を軽減する

遺言書を書くことは、あなたの遺族や関係者にとって負担を軽減することにもつながります。遺言書がない場合、相続手続きは時間がかかり、煩雑になる可能性があります。遺言書があれば、相続手続きが円滑に進み、遺族が不必要なストレスや負担を抱えることを避けることができます。

いざという時の準備

遺言書を作成しておくことで、万が一、あなたが突然亡くなった場合でも、あなたの意思が遵守され、家族や関係者が適切なサポートを受けることができるようになります。また、遺言書には後見人を指定することもでき、未成年の子供や特別なケアが必要な家族のための財産管理をしたり身上監護をしてもらえるよう、計画を立てることもできます。

遺言者の最終意思を実現

遺言書を書くことで、自分の意図を明確にし、紛争を防ぎ、負担を軽減し、いざという時に備えることができるのです。遺言書を遺すことはご自身の想いを明確にすることで次の世代・大切な人へのバトンをスムーズにつなげることにつながります。

遺言執行者の必要性

遺言執行者は、遺言者の財産の確認を行い、財産目録を作成、相続人の把握、そして遺言者の財産を管理しながら預貯金の解約や不動産・株式の名義変更(不動産登記は司法書士へ依頼)などの手続きを行います。

遺言書の内容により、遺言執行者が必要なケース、必須ではないが指定しておいた方が良いケースがありますので、遺言を作成する際には遺言執行者を指定し遺言書の中に記載しておくことも検討しましょう。

遺言執行者でないと執行できない遺言事項
  • 子供の認知(遺言認知)
  • 相続人の廃除または相続人の廃除の取り消し
  • 一般財団法人の設立

これらの遺言事項が遺言書に記載されている場合は、遺言執行者でなければ実現することができません。

遺言執行者がいなくても執行できる遺言事項
  • 遺贈
  • 信託の設定
  • 祖先の祭祀主宰者の指定
  • 生命保険金の受取人の変更

これらの遺言事項は、遺言執行者がいなくても相続人自らが執行できます。ただし、遺言執行者の指定がある場合は、遺言執行者のみが執行できます。相続人が執行できる場合でも、相続開始後、家庭裁判所に遺言執行者が選任されたときは、相続人は遺言を執行する権限を失うので、選任された遺言執行者でなければ執行できなくなります。

遺言執行が不要な遺言事項
  • 未成年後見人・未成年後見監督人の指定
  • 特別受益者の持ち戻し免除
  • 相続分の指定・指定の委託
  • 遺産分割方法の指定・指定の委託
  • 遺産分割の禁止
  • 共同相続人の担保責任の減免・加重
  • 遺贈の減殺方法の指定

これらの遺言事項は、遺言の効力発生と同時に内容が実現されるので執行を要しません。

遺言執行者がいると安心

せっかく遺言者の最終意思である遺言書が存在していたとしても、これを法的に実現させるための執行手続きがなされなければ、意味がありません。遺言の内容と相続人の期待は必ずしも一致するものではなく、相続人間で利害が対立する状況となれば、いつまでも遺言者の最終意思は実現されず、遺言書が存在せず「争族」となる場合と同様の結果になってしまいます。

遺産の規模が大きく相続手続きの複雑化が予想される場合や、特定の相続人に法定相続分を超えて財産を相続させる旨の遺言がある場合、相続人以外の人に遺贈する旨の遺言がある場合などは、相続開始後にスムーズに手続きが進めることが難しい場合もよくあります。

認知、相続人の廃除や取り消し、一般財団法人の設立などの、遺言執行者が必須な場合以外でも、相続人らが協力して手続きを進めることに少しでも不安がある場合は、遺言書の中で遺言執行者を指定しておく方が良いでしょう。

遺言執行者の権限の拡大・明確化

民法改正によって遺言執行者の権限が拡大・明確化されました。

特定財産承継遺言があった場合に遺言執行者が相続登記を申請できることや、預貯金の解約・払い戻しの権限があることが明確化され、復任権が与えられました。

また、遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は遺言執行者のみが行うことができることが規定されました。相続人以外の人に遺産を渡したい場合などは、遺言書で遺言執行者を指定しておくことをおすすめします。

遺言執行者に強い権限が認められているからこそ、あらかじめ被相続人の方が遺言書で適切な遺言執行者を指定しておくことが大切です。

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遺言者の意思を正確に反映させるために、当事務所では行政書士が丁寧に聞き取りを行い、納得いくまで文案の作成をいたします。遺言執行者を指定した公正証書遺言を作成しておくことで、遺言者の意思を正確に実行することが可能になります。

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