相続したくない土地を国に引き渡す方法 ー 相続土地国庫帰属法

相続土地国庫帰属制度とは

相続土地国庫帰属制度の導入背景

近年、都市化や人口動態の変化により、土地利用のニーズが大きく変わっています。特に相続した土地を望まない人が増えており、それに伴い土地を手放したいというニーズが高まっています。相続や遺贈を通じて不本意に土地を取得した所有者は、増加する管理負担や固定資産税の重圧に直面し、管理不全を招くリスクが高まっています。

相続土地国庫帰属制度の概要

この背景を受けて、相続または遺贈により土地を取得した者が自らの意志で土地を国庫に帰属させることが可能な新しい制度が設けられました。この制度は、管理コストの国への転嫁を可能にし、将来的に土地所有者不明となり管理不全化することを予防することを目的としています。

手続きの流れ

  1. 事前相談:まずは行政書士かわいあい事務所にご相談ください。
  2. 承認申請:必要書類を準備して、法務大臣に対して国庫帰属の申請を行います。
  3. 要件審査:法務大臣は提出された土地が国庫帰属の要件に適合するかを審査(書類審査及び実地審査)します。通常の管理や処分に過度の費用または労力が必要な土地は、申請を却下することがあります。
  4. 審査手数料の納付:土地一筆につき1万4000円の審査手数料が必要です。
  5. 負担金の納付:申請者は土地管理費相当額の10年分の負担金を納付する必要があります。

負担金はおいくら?

法務省HPより

(※1)
 市街化区域とは、すでに市街地を形成している区域又はおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域をいいます。
(※2)
 用途地域とは、都市計画法における地域地区の一つであり、住居・商業・工業など市街地の大枠としての土地利用が定められている地域をいいます。
(※3)
 農用地区域とは、自然的経済的社会的諸条件を考慮して総合的に農業の振興を図ることが必要であると認められる地域として指定された区域をいいます。

要件

以下で説明する却下要件・不承認要件に該当しなければ法務大臣は承認しなければならないとされています。

却下要件

次のいずれかに該当する場合には、承認申請を却下されてしまいます。

  • 建物の存する土地
  • 担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
  • 通路その他の他人による使用が予定される土地(墓地、境内地、現に通路・水道用地・用悪水路・ため池の用に供されている土地)が含まれる土地
  • 土壌汚染対策法上の特定有害物質により汚染されている土地
  • 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地
不承認要件

次のいずれかに該当する場合は不承認処分となってしまいます。

  • 崖(勾配が30度以上であり、かつ、高さが5メートル以上)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの
  • 土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地
  • 除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地
  • 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地
  • 通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地

これらの要件に該当しなければ、承認され、国庫に帰属させることができます。

申請に必要な書類

  • 申請書
  • 承認申請に係る土地の位置及び範囲を明らかにする図面
  • 承認申請に係る土地と当該土地に隣接する土地との境界点を明らかにする写真
  • 承認申請に係る土地の形状を明らかにする写真
  • 申請者の印鑑証明書

 【遺贈によって土地を取得した相続人が添付必須の書面】
相続人が遺贈を受けたことを証する書面
 <具体例>
 ・遺言書
 ・亡くなった方の出生から死亡までの戸籍全部事項証明書、除籍謄本又は改製原戸籍謄本
 ・亡くなった方の除かれた住民票又は戸籍の附票
 ・相続人の戸籍一部事項証明書
 ・相続人の住民票又は戸籍の附票
 ・相続人全員の印鑑証明書


【承認申請者と所有権登記名義人が異なる場合に添付必須の書面】
土地の所有権登記名義人(or表題部所有者)から相続又は一般承継があったことを証する書面 
 <具体例>
 ・亡くなった方の出生から死亡までの戸籍全部事項証明書、除籍謄本又は改製原戸籍謄本
 ・亡くなった方の除かれた住民票又は戸籍の附票
 ・相続人の戸籍一部事項証明書
 ・相続人の住民票又は戸籍の附票
 ・遺産分割協議書


【任意で添付する書面】
 ○ 固定資産評価証明書
 ○ 承認申請土地の境界等に関する資料

国庫帰属後の土地の取り扱い

国庫に帰属した土地は、普通財産として国が管理・処分します。農用地や森林などの土地は農林水産大臣が、それ以外の土地は財務大臣が管理・処分の責任を持ちます。

まとめ

国庫帰属制度により、管理不全に陥りやすい土地を効果的に管理し、土地の所有者不明化を防ぐことが可能となります。

この制度の導入は、土地の管理負担を感じる相続土地所有者にとって、大きな解決策となり得ます。もし相続または遺贈により土地を取得し、その管理に困難を感じている場合は、この国庫帰属制度の利用を検討することをお勧めします。

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