農地転用許可制度
日本における農地は、農業生産性の維持や環境保全など、多くの重要な役割を果たしています。しかし、事業拡大や住宅建設など、農地を他の用途に利用したい場合があります。このようなときには、「農地転用許可」が必要になります。今回の記事では、農地転用許可の概要、手続きの流れ、必要な書類、そして行政書士がいかにしてこのプロセスをサポートできるかについて解説します。
農地転用許可制度とは何か?
農地転用許可制度は、農地法により定められた制度で、農地を農業以外の目的で利用する場合に、県知事の許可が必要とされています(市街化区域内の場合は農業委員会への届出が必要)。この制度は、農地の有効利用と農業の保護を目的とし、優良な農地を確保するために設けられています。
農地転用にあたっては、その立地条件や農地の種類に応じて許可の基準が異なります。例えば、市街地に近い農地や生産性の低い農地は転用が可能ですが、優良な農地の転用は原則として認められていません。
許可が必要な場合と許可申請者
許可が必要な場合
農地の所有者が農地を転用する場合、または農地、採草放牧地を転用するための権利設定や権利移転を行う場合。
許可申請者
申請者は農地転用を行う者(農地所有者)や転用事業者です。
許可不要の場合
国や都道府県、市町村が特定の事業のために農地を転用する場合など、特例として許可が不要とされるケースもあります。
立地基準ごとの許可方針
農地法では、市街地に近接した農地や生産力の低い農地等から順次転用されるよう誘導するため、立地基準(農地区分)に応じ、転用の可否を判断することとなっています。概要は次のとおりです。
農地の区分 | 営農条件、市街地化の状況 | 許可方針 |
第3種農地 | 鉄道の駅が300m以内にある等の市街地の区域又は市街地化の傾向が著しい区域内の農地 | 原則として許可 |
第2種農地 | 市街化が見込まれる農地又は生産性の低い小集団の農地 | 周辺の他の土地に立地することができない場合等は許可 |
第1種農地 | 10ha以上の規模の一団の農地、土地改良事業等の対象となった農地等良好な営農条件を備えている農地 | 原則として不許可(ただし、土地収用対象事業の用に供する場合等に許可) |
甲種農地 | 市街化調整区域内の土地改良事業等の対象となった農地(8年以内)等特に良好な営農条件を備えている農地 | 原則として不許可(ただし、土地収用法第26条の告示に係る事業の場合等に許可) |
農用地区域内農地 | 市町村が定める農業振興地域整備計画において農用地区域とされた区域内の農地 | 原則として不許可 |
一般基準
立地基準を満たすと同時に一般基準を満たすことが必要です。概要は次のとおりです。
事業実施の確実性 | 資力及び信用があると認められること。 |
転用行為の妨げとなる権利を有する者の同意があること。 | |
行政庁の許認可等の処分の見込みがあること。 | |
遅滞なく転用目的に供すると認められること。 | |
農地転用面積が転用目的からみて適正と認められること | |
被害防除 | 周辺農地に係る営農条件に支障を生ずるおそれのないこと。 |
農業用用排水施設の有する機能に支障を生ずるおそれのないこと。 | |
土砂の流出、崩落等災害を発生させるおそれのないこと。 |
許可申請の流れ
- 事前相談:転用計画を地方自治体の農業委員会に相談し、指導を受けます。農地転用許可を受けるには、農地法の他にも都市計画法や建築基準法等の関係法令にも適合しているか確認する必要があります。
- 必要書類の準備:転用許可申請に必要な書類を準備します。これには、転用計画書、土地の登記簿謄本、位置図、土地利用計画の説明資料などが含まれます。
- 申請提出:準備した書類をもって、地方自治体に申請を提出します。
- 審査:申請書類と計画が農地法及びその他の関連法令に適合しているか地方自治体が審査します。
- 許可決定:審査を経て、転用許可が下りると、正式な許可証が交付されます。
必要な書類(5条許可申請書類の例)
1.土地登記簿謄本 | 申請地1筆ごと |
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2.位置図 | 1万分の1~5万分の1 |
3. 案内図 | 地図に申請地を朱色で落とす |
4.土地の公図写 | 申請地および隣接地の地番・地目・所有者を記入する |
5. 建物配置図・計画平面図 | 排水系統を図示要、場合により求積図要 |
6.住民票など | 転用者のみ。ただし、譲渡人の住所が謄本と異なる場合は双方添付 法人登記簿謄本および定款または寄付行為の写し(必要に応じ印鑑証明) (注釈)譲受人が法人の場合 |
7.事業計画書 | 自己住宅などの軽微な案件は不要 |
8.資金証明 | 施工に必要な金額の多寡にかかわらず要 |
9. 農用地区域の除外通知書の写し | 農用地区域内農地の場合 |
10.土地利用委員会の承諾書などの写し | 委員会案件の場合 |
11.農業を営む者であることの証明 | 農家住宅・農業用倉庫などの場合 |
12.委任状 | 行政書士による申請の場合 |
その他にも、収支計画書、代替地検討表、隣地承諾書、求積図、履歴事項全部証明書(法人)、定款(法人)等が必要になる場合もあります
無断転用に対する罰則
農地を転用したり、転用のために農地を売買等するときは、原則として農地転用許可を受けなければなりません。 この許可を受けないで無断で農地を転用した場合や転用許可に係る事業計画どおりに転用していない場合等には、農地法に違反することとなり、工事の中止や原状回復等の命令がされる場合があります。 また、3年以下の懲役または300万円以下の罰金(法人の場合は1億円以下の罰金)が科されることがあります。これは、農地の保護と適切な利用を促すための厳しい措置です。
農地転用を検討される方は、まずは事前に専門家に相談し、適切な手続きを踏むようにしましょう。
農地転用は行政書士にお任せください
農地転用許可の申請プロセスは煩雑で、適切な知識、多くの書類の準備が必要です。特に図面の作成等には大変な手間がかかります。行政書士かわいあい事務所ではこれらの書類の作成、申請手続きのアドバイス、事前相談から許可取得までのプロセス全般をサポートし、スムーズな手続きを実現します。